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リタリンについて

 もくじ
1.リタリンの歴史
2.日本での適応症
3.厚労省の嘘つき、やる気のないノバルティス
4.問題点
5.当院の方針

1.リタリンの歴史
 リタリン(一般名は塩酸メチルフェニデート)は、アメリカで1954年に開発され、うつ病、ナルコレプシー、慢性疲労症候群に使用され出した中枢神経刺激薬です。しかし、1960年代からは注意欠陥多動性障害(AD/HD)への効果が明らかとなり、現在ではアメリカのみならず世界的にAD/HD治療薬として使用され、実績を重ねている薬剤です。

2.日本での適応症
 日本では1958年(昭和33年)から認可・使用されています。
 当初は軽症うつ病、抑うつ神経症、ナルコレプシーという睡眠障害に適応を認められていました。しかし1998年(平成10年)になり、ナルコレプシー、難治性うつ病、遷延性うつ病の適応となりました。
 2007年(平成19年)になり、適応はナルコレプシーのみとなりました。
 AD/HDに効果のあることははっきりしているので、適応症には該当しないのですが、実際はAD/HDの人にリタリンを処方することは行われていました。そして、多くのAD/HDの人に非常に役立っていました。

3.厚労省の嘘つき、やる気のないノバルティス
 以前から一部でリタリンの乱用が生じていることは、周知の事実でありました。医師の間では十分注意して処方するのは常識となっておりました。厚労省や製薬会社のノバルティスも良く理解・把握していた筈です。しかし、対策は適応に”難治性”と付け加えたくらいで、時々マスゴミが取り上げるたびに”適正使用のお願い”なんてのを出すだけで、大したことはしませんでした。
 2007年になり、消費量が急速に伸び、違法な処方をする医師や自殺例が、マスゴミに大々的に取り上げられるに到って、厚労省は慌てて適応症を限定し、流通制限を敷く状態となりました。 経過措置期間も全くなく、流通制限・登録医の条件も二転三転しました。
 対応が遅く、同時に拙速という、まことにもって見苦しいものです。
 何か問題が起こるまでは、気付いていても何もしないというのは厚労省の伝統と思われます。
 ノバルティスの対応も滅茶苦茶で、処方登録認定証などは流通制限が施行された5日後に届くなどという、お粗末そのものでした。そのせいで全国の医療機関は、大混乱となりました。
 また、厚労省の見解としては、AD/ HDに関してのリタリンの有効性の知見がないので、AD/HDの治療薬としては認めないということです。しかし、2007年(平成19年)12月には、異例の慌しさで、リタリンと全く同じ成分のコンサータ(塩酸メチルフェニデートの徐放製剤)がAD/HDのみの適応で認可・販売開始となっております。知見がないと言って置きながら、一方では認可です。子供でもこんな嘘は付きません。
 嘘はいけませんねぇ。

4.問題点
 コンサータは18歳未満が適応ですので、成人型AD/HDには使用できません。18歳未満で使用していて著効あった方でも、18歳になった途端に処方してもらえなくなります。効果があると分かっていても使えない事態です。
 18歳になり、断薬のため急激な症状の再燃を来し、折角社会適応し、或いは学業などで優秀な結果を得ていたとしても(学業優秀者でAD/HDの人は少なからず存在する)、全てが水泡に帰すことになるのです。
 又、中枢刺激作用があるため、夜間に作用すると不眠の原因になり得ます。リタリンは作用時間がコンサータより短く、日中の服用で問題は出にくいですが、コンサータの場合、人によっては不眠が問題となることも考えられます。その人にあった処方をしたいわけですが、リタリンにはAD/HDの適応がなく、現状では不可能です。
 厚労省は、一体誰のために仕事をしているのか、どっちを向いて考えているのか。少なくとも視点が患者さんに向いていないことは確かです。

5.当院の方針
 法令・通達を遵守し、運用するしかないので、当院ではリタリンはナルコレプシーと診断した方のみに処方しております。コンサータはAD/HDと診断した18歳未満の方のみに処方しております。
 適応外処方は、麻薬等の薬剤でなければ通常は自費で行うことが可能ですが、リタリンについては流通制限があるため出来ません。コンサータについても同様です。ご了承下さい。
 なを、当院では類似薬剤のベタナミン(ペモリン)の処方はしておりません。使用経験がないのですが、恐らく今後も処方はしないと思います。